レポート|第12期(令和3年度)とっとりエコサポーターズ養成講座

待ったなしの温暖化に対して、私たちは何ができるでしょうか。

「温暖化対策」について自分ごととして考え、行動を起こす。その推進策を担うのが、「とっとりエコサポーターズ」。


2021年11月27日、県内外で「気候対策」「ゼロカーボン」に関して最前線で活動する専門家・実践者をゲスト講師に迎え、第12期(令和3年度)とっとりエコサポーターズ養成講座を開催しました。


「地球温暖化防止につながる最新情報を知りたい」「ゼロカーボンへの取り組みを知りたい」「本気でめざす。その道筋を考えたい!」という参加者の講座の一部内容をレポートします。



脱炭素社会づくりへのリテラシー


私たちは温暖化をどう捉え、向き合う必要があるでしょうか。まずは「脱炭素社会づくりへのリテラシー」と題し、国立環境研究所の江守 正多さんにお話いただきました。


まずは2021年8月に発表されたIPCCの新報告書をもとに、人間の影響が気候システムを温暖化させてきた事実は「疑う余地がない」という見解が紹介されました。




温暖化による影響は8つの主要リスクにあるように顕在化していて、対症療法的ではあるという前置きの上で「既に起こっている気候変動に対して、損害を和らげたり回避するために、適応策を考える必要がある」と江守さん。


水害が増え、水資源が限られるため、防災減災を強化する必要がある。

農業は、作付時期をずらしたり、品種改良するなど、目の前に迫りくる損害を回避したり和らげるために、前もって予測し、備えていかなければならないと江守さんは警鐘を鳴らします。


江守さんのお話の中で特に紹介をしたいのが、「温暖化対策」に関する向き合い方です。


気候変動への関心は、残念ながらまだまだ「高くない」、「無関心」と言わざるをえない状況です。



気候変動について知らないなら、知ってもらおう!

誰もが関心を持って、エコな生活を送るといいんじゃないか!


と考えてしまいますが、江守さんは


「本当にその考えでいいのでしょうか?」と疑問を投げかけます。


あなたにとって、気候変動対策はどのようなものですか?と各国の国民に尋ねたデータがあります。



それによると、世界では「生活の質を高める」と回答した人が多いのに対して、日本では「生活の質を脅かす」という回答が大半を締めたそうです。


気候変動対策=我慢。

暑い夏の時期にエアコンを我慢したり、車での移動を我慢する。


こういった「我慢」という負担意識が温暖化対策が広がらないボトルネックになっていて、このマインドを、脱炭素は前向きな社会へのアップデートだという意識へ変えていく必要があると、江守さんは言います。


温暖化対策を理解し、本質的な関心を持つ。脱炭素へ社会をアップデートするーーというお話に、本当に大多数が本質的な関心を持つことはできるのでしょうか?という疑問が頭をよぎりました。


ですが江守さんは、その疑問を解消するかのように、「国民の3.5%以上が参加する非暴力の抗議運動が起きれば、(ほぼ)必ず変化がもたらされてきた」という論文を引きながら、「社会の大部分が関心を持たなくても、日本であれば400万人。その規模でアクションが起これば、変わる可能性がある」と続けます。



事実、私たち自身も「常識」が変わる瞬間を経験しています。


代表的なものとして紹介されたのが「分煙」です。30年前は飛行機内でも喫煙ができたけど、今ではそんなことは想像できないほど、分煙は常識になりました。



そう考えると、今はまだマイナーな選択肢も30年後には当たり前になるかもしれません。


「30年後に当たり前になるかもしれない」こととして江守さんに紹介いただいたものの一つに、「テレプレゼンス」がありました。



まさにこの講座も「オンライン」で開催しましたが、オンラインでイベントへ参加することに不便よりも便利さを感じている人は多いと思います。


最後に、私たちにできることとして、「温暖化対策・脱炭素に興味を持った人は、それを応援する、後押しするような行動をする。問題に興味を持ったらネットで調べて、わかったことをSNSで発信したり、まわりの人と話しをする。企業や自治体、政治家を応援する。その活動が、本質ではないでしょうか」と、私たちの取るべきスタンスについてメッセージがありました。


温暖化対策によって得られた快適なライフスタイル。ただその事実を、自分の手の中だけに収めるのではなく、まわりへと広げていくこと。そうすることで、新たな常識、システムを手に入れていくことに繋がる。まさに、「とっとりエコサポーターズ」が担うことができる役割だと感じました。



気候変動〜地球と鳥取の気象の将来予測


続いては、日本海テレビジョンの福山 佳那さんに気象の現在と将来予測についてお話いただきました。


まずはじめに紹介されたのが、まだ記憶に新しい今年の大雨のこと。



鳥取県では、令和3年7月6日から大雨に見舞われました。線状降水帯という言葉をニュースでも多く見聞きしたと思います。非常に激しい雨が同じ場所で降り続きました。


異常気象の背景にある、気温の変化。江守さんからは世界的な気温上昇のお話を伺いましたが、私たちが暮らす地域、鳥取県ではどのような変化が起こっているでしょうか。



鳥取・米子・境。いずれの地点においても、最高気温、平均気温、最低気温ともに右肩上がりに上昇しています。


そして「雨の振り方が変化していて、短時間強雨、ニュースではゲリラ豪雨ともいわれますが、近年増え始めています」と福山さんは続けます。



1時間に50mm、80mm以上の短時間強雨の年間発生回数は、ともに増加しているそうです。


「今が旬の、松葉ガニや親ガニ。先日、初水揚げの取材へ伺ったのですが、去年の半分ほどに水揚げ量が減っていました。漁師さんに伺うと、漁獲量が厳しく制限されていることもあるのですが、海水温上昇によってカニそのものが減っているそうです。鳥取県の旬にも、温暖化の影響が色濃くでてきていると実感します」と、福山さん。


気象変化は農林漁業従事者、その恵みを受け取る私たち、そして地域の食文化。また農作物への影響だけでなく、災害、熱中症などの健康被害など、気象変化は私たちの生活の根底を揺るがす影響力があるということを実感するエピソードを紹介くださいました。


そして最後に、未来予測。



今後100年で、短時間強雨は3倍以上、無降水日数も増加するという予測から、気候変動への対策や、それを前提とした備えをする必要性についてお話しいただきました。



1.5℃ライフスタイル〜市民・企業・行政が一体となって共創するネットゼロ社会


世界的な関心の高まり。そして、猛暑や局地的豪雨など私たちの身近にもそのリスクが忍び寄っている気候変動。待ったなしの温暖化対策ですが、では企業の生産活動や私たちの消費活動は、どのように変わっていく、変わる必要があるのでしょうか?


最後に登壇いただいたIGESの小嶋 公史さんは、そのキーワードは、「1.5℃ライフスタイル」だと言います。



1.5℃ライフスタイルは、パリ協定で示された1.5℃目標の実現に向け、脱炭素型の暮らしを実現する選択肢を提示したレポート。


ライフスタイル・カーボンフットプリントを軸に、快適で質の高い暮らしの実現と、1.5℃目標の達成との両立を探るシナリオが示されています。


この、ライフスタイル・カーボンフットプリント、という言葉。「初めて聞きました」という声も複数あがりました。


カーボンフットプリントとは、その商品やサービスの生産から廃棄に至るサプライチェーン全体で出てくる温室効果ガスをいいますが、ライフスタイル・カーボンフットプリントは、家計が消費する製品やサービスのライフサイクルにおいて生じる温室効果ガスのこと。



消費ベースで見ると、カーボンフットプリントのうち6割以上が家計からの排出。だからこそ、「私たちがどのような消費選択をするかが、企業へのメッセージになる」と小嶋さんは言います。


では、カーボンフットプリントの少ないライフスタイルはどのようなものでしょうか?


海や山という自然に囲まれる地方。高層ビルや人が密集する都市部。一見、都会的なライフスタイルの方が環境負荷が高いのではーー?と思われがちですが、実はそうではありません。それを裏付けるようにデータを紹介いただきました。



左から多い順に並んでいますが、東京や大阪、名古屋といった都市部は中盤以降に位置しています。


グラフは住居、移動、食、製品などで構成されていますが、移動や住居の比率が大きいことが見て取れます。車社会が前提である地方で高くなることは想像の通り。移動に関して言えば、交通インフラを含めた都市デザインや私たち自身がどのような移動手段を選択するかを考えていく必要があるということがわかります。


そして、ライフスタイル・カーボンフットプリントの削減には次の3つのアプローチがあります。



省エネ住宅のように効率を高める効率改善アプローチ。自動車通勤から公共交通機関の利用へ転換するような、モード転換アプローチ。そして、テレワーク推進に伴う通勤=移動自体の削減のような消費総量削減アプローチです。


1.5℃ライフスタイルの実現に向けては、このすべてのアプローチを進める必要があります。


その他の取り組みとして、1.5℃ライフスタイルの実現に向け市民参加型で都市シナリオを策定するワークショップの活動が紹介されました。そして市民の活動を促進するために、例えば公共交通機関や自転車利用を促進するような働きかけを政府・自治体へ求めることや、低炭素型の製品・サービスの選択肢の提供を企業へ求めること。これからの実現に向けて、声を上げていくことの重要性についてお話しいただきました。



まさに先に紹介したように、「私たちがどのような消費選択をするかが、メッセージになる」ということを実感する内容でした。




3名の講師を迎えて開催した、とっとりエコサポーターズ養成講座。


最後に、参加者からの感想一部と、参加者に向けて贈られた江守さんからのメッセージを紹介します。


▼参加者からの感想


『「負担意識を変えよう」とおっしゃっていた部分に非常に共感しました。肉食を控えることやプラスチックゴミを出さないようにすること、何かを我慢することで負担に思う人は多くいると思います。自身もその一人でした。企業や社会に働きかけたり、発信して声を上げる仲間を増やしていくことが、より大事になってきているんだなと改めて思いました』


『一番驚いたのは「今世紀末での日本の年内気温が平均で4.5℃も上昇してしまうかもしれない」というお話でした。現状でさえ、猛暑日は命の危険を感じるほどの暑さなのに、4.5℃も熱くなったらどれだけ危険か、想像しただけでも怖くなりました。温室効果ガスをいかに本来の形に戻していくかということが重要になり、ゼロカーボンに本腰を入れないとまずいなと感じました』


『現状の社会の大きなシステムに縛られ抜け出せない世界に自分自身も嫌気が差しています。そのような状況を"ロックイン効果"ということ、今回で初めて知りました。100%電気自動車は価格もまだまだ高く、充電スポットは限られ、充電にも時間がかかるため、脱炭素のために即買い替えますとはやっぱりならない。など、個人の努力だけではどうにもならないことがまだ多くあると感じています。社会がもっと変わっていく必要があり、そのためには個人がそれぞれの役割をしっかり理解し、働きかけていくことが大事なのだと思います。』


▼江守さんからのメッセージ


「一人の人が変わることももちろん大切です。ただ加えて強調するならば、その変化をまわりへと広げていくこと、変化を加速するための働きかけを考える必要があります」


12回目となる、とっとりエコサポーターズ養成講座。この講座を受け止めた私たちが変わること、伝えることが、まずはじめにできることではないか。ここで得た「情報」「経験」を、自分たちだけに留めないこと。最後に宿題をもらったような、4時間の養成講座でした。


このレポートや講座、とっとりエコサポーターズに関心をお持ちくださった方、ぜひセンターへ問い合わせくださいませ。