学校を断熱しよう!オンライン講演会開催レポート

今年の夏休みに鳥取県米子市の小学校で開催予定の「親子で行う断熱ワークショップ」に向け、学校断熱の意義や事例を共有しあう「学校を断熱しよう!オンライン講演会」が開催されました。


ゲスト登壇をいただいたのが、日本で最初に学校断熱DIYを実施した、津山市役所の川口義洋さん。脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会の委員として、日本の住宅基準の向上を強く推進する東北芸術工科大学/みかんぐみの竹内昌義さん。


全国の学校で断熱ワークショップを開催してきたお二人のプレゼンにはじまり、断熱ワークショップ開催に込めた思いを交わしあい、後半のディスカッションでは民間・行政の立場を交え「学校断熱」を前へ進めるための方策についてディスカッションが繰り広げられました。


参加者は群馬、茨城、千葉、東京、長野、京都、兵庫、鹿児島、沖縄...と全国各地から約100名もの方がリアルタイムで視聴くださいました。その模様を一部、レポートします。


公共施設の『脱炭素』と『学校断熱』のススメ


津山市職員で建築専門家の川口さん。国や自治体の財政悪化に対抗し、FM戦略(公共施設の最適化)を図って活動しています。



FM戦略のキーワードは「公共施設にかかる費用」。氷山の一角として表されることが多い公共施設費用は、建築費以上に、光熱費やメンテナンス費、修繕費が水面下のコストとしてかかってきます。2016年の「津山市公共設白書」で、公共施設が初めてデータベース化されましたが、津山市のほぼ全ての公共施設がランニングコスト部分で赤字であることが発覚しました。



中には、維持管理費不足のためガムテープで破損部分を修繕する施設があるほど。当初は「公共施設面積30%縮減」をFM戦略の目標としていましたが、色々な視点を盛り込み、2021年に「維持管理費30%削減」へと改定したといいます。


そんな中、川口さんが「学校断熱WS」」を始めたきっかけが「都市経営を学ぶ超実践型のプロフェッショナルスクール」。断熱セミナーを受講したメンバー内の「やってみちゃいなよ」という一言が始まりだったといいます。



WSの対象は、津山市小学校の最上階の一教室。教員や地域の人々も一緒に、1日かけてDIYで断熱化しました。結果は、空調負荷が60%減少。数字の変化以上に室内環境の変化が著しく、学習効果や身体への影響もプラスに繋がることが考えられました。また、断熱化にかかった約40万の経費は、地元企業の協賛金やクラウドファンディングで調達できたといいます。


(津山市・学校断熱ワークショップダイジェスト動画)


なぜ、学校断熱がFM戦略につながるのか?それは、公共施設の大半を「学校」が占めていることが理由です。例えば、鳥取県米子市の公共施設で、「学校」が占める割合は35%。日本は、2050年までにカーボンニュートラルを目指していますが、脱炭素戦略の始め方としても「学校断熱WS」はお勧めなのです。


今では公民連携で「稼ぐ」公共空間のリノベーションも手掛ける川口さんですが、最初に始めた「学校断熱」の波は全国にも広がっているそうです。



脱炭素戦略の一歩目としての「学校断熱ワークショップ」


建築・エネルギー問題の第一人者として、脱炭素社会に向け活動している竹内さん。



日本は、2030年までにCO2排出量を-46%、住宅では-66%を目標としていますが、具体的な計画もなく進捗が芳しくないのが現状です。「脱炭素社会のパラダイムシフト」に、石油など従来のエネルギー源全てを再生可能エネルギー由来の電気に代替えする考えがありますが、その実現にデメリットはないと竹内さんは言います。


例えば一個人では、ほぼ自給生活、暖かい家、電気代0、車の燃費はUPし、ガソリンは不要に。社会でも、化石燃料の輸入不要、送電線の負担減少、地方の産業創成に繋がります。


脱炭素社会に向けて世界では既に動きがある中、日本の現状に「乗り遅れたら本当に大変です」と竹内さんは警鐘を鳴らします。また、少子高齢化社会と地方から都市へ若者が移動する「人口問題」を抱えた日本は、「地元の経済を自分たちで回す」ことが必須になってきます。そのためにも、エネルギー源を外に依存せず、自国内で完結することは重要なのです。



「カーボンフットプリント」とは、私たちの行動によって発生する温室効果ガスを定量化したものですが、「住居」における指標は高く、「住宅政策」はCO2削減のキーワードになります。CO2排出量の少ない住宅を新築することも大事ですが、既存の住宅を改修することも大きなポイントです。



そこで竹内さんが着眼したのが、「学校」を対象にした断熱改修プロジェクト。保護者や生徒も含めた「断熱改修プロジェクト」の他、メーカーとタイアップし断熱改修する実証実験も行ったそうです。参加者の声で目立ったのは、「学習意欲の向上」や「地球温暖化に対する理解」。CO2排出量削減の成果の他、コスト面や断熱化対象の学校数に対しての財政課題も明らかになりましたが、QOLの観点や地球温暖化への啓発拠点としても、「学校断熱」は意味があると教えて頂きました。


断熱の“熱”を拡げる


後半のディスカッションではお二人のプレゼンテーションを受け、「とっとりで生まれた健康省エネ住宅~NE-ST~」鳥取県庁住まいまちづくり課 槇原氏のプレゼンから始まり、学校の断熱、住宅の断熱性能の向上を広めていきたい!という思いを竹内さん、川口さんを含めて主催者が一緒に対話し、覚悟を語り合いました。


長いプログラムにもかかわらず後半のディスカッションに差し掛かっても約100名の参加者は途絶えることはありませんでした。


その熱は参加者にまで及び、参加者の一人として視聴くださっていた米子市のPTA連合会長さんにも飛び入りでパネラー登壇いただき、「学校断熱をやっていきたいです」とのコメントをいただきました。


その他、参加者の方から届いた感想の一部を紹介します。


「米子出身者として、どんな展開に持っていけるんだろうか?ということに注目しつつ、応援しています!」


「すでに実践されているノウハウを共有していただけることで、これから取り組んでみよう!と思っている我々のような町の自治体職員やPTA(親)、地方環境ボランティア団体の大きな勇気になると思います!ムーブメント作りたいですね!」

「・登壇された皆さんの想いが伝わってきました。本当はシンプルなことなんですが、なかなか取り組めていない現状がとても歯がゆく思いました。各地域で想いのある方が実践していくことが重要だと感じました。」


「みじかな学校の断熱化に参加できれば、子供を巻き込んでできれば。その行動が温熱環境向上、低炭素社会へ目指す取り組みになる。とても良い学び、体験になりますね。そのデータが更に町、県を動かす資料になる。とても素晴らしいと思いました。ぜひ参加したいです!」


「学校断熱」の意味や事例に触れ、その可能性の大きさを感じるオンライン講演会。あっという間の3時間でした。


子どもたちの心地よい学校生活のため、脱炭素社会へ向けて、このあとに続く断熱ワークショップへのご参加や断熱への熱を消さないように持ち続けていただけたら幸いです。


後半のディスカッション部分はYoutubeでも公開しています。よろしければぜひ、ご覧ください。