【レポート】家も身体も財布もポカポカ「断熱」のある暮らしを考える eco端会議(12/15 オンライン開催)

「冬の家が寒いのは当たり前」「暖房コストが高い」など、快適な暮らしとはかけ離れている日本の住宅へのイメージ。


日本の住宅は世界から見ても断熱性が乏しく、エネルギー効率がとても悪いのが現状です。断熱することで、少ないエネルギーで暮らせ、世界のエネルギー消費量を減らすことに繋がります。


今回は、鳥取県で建築デザインの仕事をしながら、断熱性能など取り入れたDIYや古民家などの改修を行っている吉田さん。断熱効果の高い内装材を扱う企業に勤めながら、とっとりエコサポーターズとして鳥取・香川で活動する釘宮さんをお迎えし、快適に住むための「断熱」のある暮らしから、エコと温暖化について考えました。


最初にご登壇いただいたのは、建築デザイナーの吉田輝子さん。断熱WS(ワークショッ

プ)と題して、断熱の現状などについてお話しいただきます。


江戸時代までの建築思想では我慢する考えしかなかった


まずは、日本の建築の歴史や断熱への考え方について。


「日本の家は寒い」と言われるようになったのは、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけての歌人・随筆家の吉田 兼好(よしだ けんこう)が、家造りの格言を残していたことがきっかけなのだそう。


兼好が「寒いのは我慢できるが、暑いのは我慢できない。だから風通しのよい家をつくりましょう。」という建築思想を書き記しているように、江戸時代までの日本の建築物は夏の暑さを旨として考え、"風通し"を重視して作られていました。

シロアリや湿気による木材の腐敗を防ぎ、家を長持ちさせるためという部分では非常に理にかなった考え方でした。


しかし、夏の暑さだけを考えてつくられた家は、冬になると寒く、我慢をしなければならなかったのです。


そして、現代。断熱の歴史は意外にも浅く、「断熱をしましょう」と言われるようになったのは、わずか30年ほど前のこと。現在も断熱を施されている家の割合はとても少なく、無断熱の家は全体の約4割というデータもあります。


「海外の水準で室温が10℃を下回ることはほとんどありません。日本は海外に比べて室温の水準がとても低いので、諸外国からするとそれは住む家じゃないと言われてしまいます」と吉田さん。


そのような状況から昨今、日本では室温の水準を見直す動きとして、"ZEH”(ゼッチ - ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に注目し、力を入れているハウスメーカーが増えてきています。



鳥取県独自の省エネ基準"NE-ST"



次に、鳥取県での取り組みについてお話がありました。

「実は今、鳥取県が日本の断熱業界で注目されています」と吉田さん。


鳥取県では住宅面での対策として、「家から健康になる」をテーマとした“NE-ST”(とっとり健康省エネ住宅)という省エネ住宅基準で住まいづくりを行っています。


この”NE-ST"はZEHの基準を更に見直し、より省エネルギーかつ快適に暮らせるように鳥取県が独自に定めた省エネ基準です。




また、県による助成金なども新たに設けられています。県が主体的になって断熱や省エネに積極的なことは珍しく、全国に先駆けて進められているため、それも注目されている理由のひとつとなっています。


断熱と聞くと暖めるイメージが強いですが、実は断熱の工事は夏の暑さにも有効です。

断熱材には熱を伝わりにくくする効果があるため、外気の暑さを遮断し屋内の温度が上昇するのを防ぎます。


断熱することにより、エネルギーロスの少ない空間となり省エネや環境保全にもつながるのです。



ーーー次に、吉田さんが断熱へ取り組むようになったきっかけをお話しいただきました。




エコリノベーションプロフェッショナルスクールとの出会い


吉田さんは、"エコリノベーションプロフェッショナルスクール"を受講したことがきっかけで、見た目のリノベーションから断熱など省エネのリノベーションへと取り組みをシフトチェンジしていったのだそう。


エコリノベーションプロフェッショナルスクールとは、断熱ワークショップを行なうプロフェッショナルを育成するスクールです。

(エコリノベーションプロフェッショナルスクール受講生の皆さん)


(透湿防水シートを敷いて断熱DIYを施している様子)



主催している株式会社エネルギーまちづくり社は、"ENERGYとMACHIZUKURI"(EとM)をテーマにエネルギーを使わない豊かな暮らしや地域でエネルギーを循環させ、自立する地域社会を作ることを目指している会社です。(参照:株式会社エネルギーまちづくり社)


吉田さんはこの取り組みを参考に、鳥取県版の"TOTTORIのENERGYとMACHIZUKURI"(TEM)というチームを結成し、現在は各地で断熱ワークショップを開催しています。


「断熱は省エネや光熱費だけじゃなく、子どもや高齢者の健康にも大きく関わるので、将来的にはやっぱり推奨されていますね。」と吉田さん。


長い時間軸で断熱の効果を考えたり補助金などの付け方を変えていったりと、総合的に取り組みを押し進めることで暮らしの質を上げていくことができるのかもしれません。



ーー続いて、とっとりエコサポーターズとしても活動されている釘宮さんに、まずは先程のお話でも出てきた"ZEH"について、更に掘り下げてお話いただきます。



家の室温が健康寿命に影響する?!


先程の吉田さんのお話にも出てきた"ZEH"は、簡単に説明すると、「健康・快適に暮らせて安全で安心かつ省エネで地球と人、そして家計に優しい住まいづくり」のこと。

ZEHをすることは、健康被害を防ぐことにも繋がってきます。


例えば日本の場合、特に夏は全般的に暑く猛暑日が続き、夜は熱帯夜が増えたことで熱中症になる人が年々増加してきています。そしてこの熱中症は外だけでなく、家の中(室内)でも起こることがあります。


「熱中症の発生場所で一番多いのは、実は家の中なんです。」と釘宮さん。



画像のグラフのように、熱中症発生場所の約4割は住居であるというデータもあり、運動場や道路・駐車場よりも熱中症のリスクが高くなるのです。


また、寒暖差が原因で起こる「冬のヒートショック」による事故も毎年多発しており、近年では交通事故で亡くなる人より、家の中の温度差で亡くなる人のほうが3〜4倍多いと言われています。

実際に、"室温を2°上げることで健康寿命が4歳伸びた"という研究結果もあるほど、家の室温が健康寿命(元基な老後など)に影響していることがわかっています。


熱中症やヒートショックを起こさない家にするためにも、ZEHを施すことは非常に重要となってきています。


建築費用は高いけれど実は家計に優しい


さて、ここまでの話からZEHは、私たちの健康にも大きく関わってくることがわかりました。

とはいえ、ZEHを施すのに建築費用が高くなるということは、結局のところ家計の負担になるのではないかと思われている方も多いはず。


しかしながら、ZEHによる省エネ効果で光熱費が下がるということは、断熱と同様に、長い目で見ると“家計に優しい"ことに繋がるのです。


例えば、一般家庭(戸建て4人家族)1ヶ月の光熱費の平均は約2万円〜2万2千円とされており、35年ローンで家を購入したとすると光熱費だけで約800万円かかることになります。

また、この光熱費の中には電気代として、"再エネ賦課金"が含まれています。


"再エネ賦課金"(再生可能エネルギー発電促進賦課金)とは、太陽光発電などの再生可能エネルギーを発電・売電している個人や事業者に、私たちが支払っているお金のことです。



その額はなんと、年間約1万円以上。再エネ賦課金は年々上がってきており、従量制のため光熱費が増えれば増えるほど金額が高くなっていきます。


裏を返せば、光熱費が下がれば再エネ賦課金の負担額も下がることになり、結果的にZEHを施した家のほうが、長い目で見ると家計に優しいということになります。


「家を建てる際には、光熱費を含むトータルコストで考えることが大事です」と釘宮さん。


これから新築を建てられる方はぜひ、ZEH住宅を検討されてみてはいかがでしょうか?



手軽にできる断熱や省エネは?


これから新しく建てる住まいはZEH。では、今すでに建っている住まいはどうするのか。


「まず一番手軽かつ簡単にできる断熱は窓を断熱することです。」と釘宮さん。


冬場の暖房使用時に室外へと逃げる熱の約6割、夏場の冷房使用時に外気から侵入する熱の約7割は、窓などの開口部からと言われています。何もしないままでは空調機器の効果が十分に発揮できず、光熱費にも影響してきてしまいます。


そこで有効なのが窓の断熱です。内窓をつけたり、ホームセンターで売られている断熱シート(プチプチ)を貼るだけでも効果が高いとのこと。また、夏場の日差しは遮熱カーテンや遮光カーテンなど室内で遮熱するよりも、窓の外でたてずやよしずのようなすだれを立て掛けておくほうが、約8割の熱をカットできるのだそう。



"はじめはあまりお金をかけずに断熱したい"という方にはぴったりな方法ですね。


もし、お金おかけてでもしっかり断熱やリフォームをしたいという方には、今年から新たに開始された「こどもみらい住宅支援事業」の補助金制度を使ってみるのもよいかもしれません。


こどもみらい住宅支援事業

https://kodomo-mirai.mlit.go.jp/



ーーーここからは参加者の皆さんを交えて、断熱の現状や実践されていることなどについてクロストークを行います。


「お風呂場の窓の断熱は効果が高い」「寒さ暑さを気にしない住まいを実現することで、様々なところで経済的負担を押さえることができると思う」「まずは、手に取りやすい材料を工夫してできるところから断熱していきたい」といった声が集まりました。


中には、「断熱による光熱費の削減は、利回りの高い投資だ」という金言も。



最後に、吉田さんと釘宮さんから感想・メッセージをいただきました。


▼吉田さんからのメッセージ


「我慢せずになんとかできる方法を知ることが大切だと思うので、積極的にこうしたイベントに参加すれば、思いもよらなかった解決方法を得られると思います。これからも我慢しない家をつくっていくことができたらいいなと思います。今日はありがとうございました!」


▼釘宮さんからのメッセージ


「断熱も楽しくも人生も楽しくいきましょう!今日はどうもありがとうございました!」



ゲストをお招きして、快適に住むための「断熱」のある暮らしについて話し合った今回のeco端会議。


一見すると、断熱はお金がかかったり大掛かりな工事が必要になるなど、ハードルが高いように思ってしまいがちですが、実は簡単な一手間を加えるだけでも、十分な断熱効果を得られることがわかりました。

断熱することで体に優しく健康に過ごすことができ、省エネで家計も助かる。そして地球への負担も減らすことができます。


今日からできる断熱DIYを見つけて、より快適に安全に暮らしていきましょう!


次回のエコ端会議は、『「木」と「火」にふれる、気になる暮らし薪ストーブのある暮らしを考える』と題して1月27日に開催します。みなさんのご参加を、お待ちしています。


▶イベント詳細はこちらから

https://www.ecoft.org//post/eco20220127